京都比良山岳会
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活動記録 > 2006年
[No.2777] 夏山合宿:穂高岳バリエーション


【日程】2006年8月4日(金夜)〜6日(日)
【参加者】9名

◆8月4日(金)晴れ
上高地〜涸沢
【行程】上高地5:35出発→6:15明神着→7:00徳沢着→8:20横尾着→9:35本谷橋着→11:30涸沢着
【記録】
怪我後3ケ月、醍醐と愛宕でのリハビリと、先週の笊例会に参加しただけで、歩荷トレもせず不安なスタートとなった。
共同装備は免除して頂いて、ザックの重量は15K。横尾までの水平道は普通に歩けた。しかし横尾からの登山道の登りになるとザックの重みが堪えてきた。幸い、足首は何とも無いので、ぐねら無いよう、足の置場を慎重に選んで登る。本谷橋に着いた頃にはかなりヘロヘロ、体力が落ちているのを実感する。メンバーも登攀具や共同装備を担いでいるので、楽ではなさそうだ。本谷橋でゆっくりめに休憩し、冷たい沢に手を浸け、気合いを入れ直す。
涸沢まで後少しという所で雪渓が現れた。過去二回来ているが、涸沢までは雪渓は無かった。やはり今年は特別雪が多かったのだろう。キックで歩くが、体がきつく重い、ふらついていたと思う。這々の体で涸沢に着いた。
テントを設営し、北穂登頂組と涸沢生ビール組に別れた。 当然私は生ビール組、素晴らしいロケーションで呑むビールは最高!幸せを感じた。

涸沢〜北穂
【記録】13時涸沢発で、16時までに戻ることを約束に北穂に向けて出発しました。U坂さんはとっとと飛ばして無事ピークを踏んで帰ってきていました。
K藤さんとOが続きましたが、北穂の小屋が見えた地点(テン場近くまで行っていたと思います)で14時半だったので引き返すことにしました。後から、M山さんとT田さんも続いていたようですが、途中で帰ったみたいです。その他は?パノラマ売店でビールですよ!もお!!


◆8月5日(土)晴れ
A:前穂北尾根バリエーション
【行程】4:20涸沢ヒュッテ前→5:305・6のコル→6:254・5のコル→7:20-403・4のコル(登攀準備)→9:003峰ピーク→10:30-11:00前穂頂上→11:30紀美子平→11:50-12:05最低コル分岐付近→13:00-20奥穂→13:50-15:20穂高岳山荘→17:20涸沢ベースキャンプ
【記録・感想】
 ヘッドライトをつけて涸沢カールの雪渓を歩き始めた。M山・N野・Oはアイゼンを装着、T田さんはアイゼンなしだが慣れた足取りだ。U坂さんはお気に入りのウォーターシューズ(?)にアイゼンをつけたがうまくフィットせずやや遅れる。雪渓にはすでに先行パーティーが歩いていたが、途中で追い抜き、予定通りのコースタイムで5・6のコルに着いた。さていよいよ登攀の始まりだ。
 三峰までは急な岩場はないとのことで、ロープなしで登る。そしていよいよ三峰。3・4のコルでフラットシューズに履き替え、ロープ・ギア類を準備した。U坂さんとN野さんがシングルロープで先行した。1ピッチ目の取り付きで往生していたが、なんとか先に進めたようだった。続いてM山さんリードでO・T田さんがダブルロープで登る。三峰は北尾根の中では一番難しい。だがノーロープで登る人もいると聞いていたので、たいしたことはないと高を括っていたが、されど三峰。高度感もあって、ノーロープでは怖いなという所が数箇所あった。M山さんがうまくルートファインディングしてくれたおかげで時間ロスなく3ピッチ登りきることができた。10mほどの2峰の下りはクライムダウンもできそうだったが練習のため懸垂下降した。懸垂下降の後始末はU坂・T田にまかせ、他の3人は最後の登りにつく。下から眺めていたあのスカイラインを完登するのかと思うと感慨深い。M山リーダーの配慮でピーク一番乗りはOに譲ってもらった。いつも雲隠れしている槍のピークまではっきり見える快晴のもと、気持ちいいクライミングが楽しめた。
 さてピークで終わりではなく、ここから奥穂まで行って涸沢に戻らないといけない。一般登山道だが気は抜けない。さすがのM山リーダーも疲れが見えていた。ゆっくり歩いてなんとか奥穂登頂。そして「早くジュースのみたい!」気持ちをエネルギーに穂高岳山荘に着いた。するとK藤・T岡・T田の3名がいるではないか!聞くと奥穂から私が送信した無線を聞いて待っていたとのこと。この日はU坂・O・K藤が無線の電源をオンにしており、T岡・T田とともに行動しているK藤さんに度々状況を報告していた。ただ周波数帯が他グループと重なっていたか、地形的なものもあったと思うが、なかなか相互通信できないのか現状だった。奥穂のピークで送信した無線に対してもK藤さんからの応答はなかったが、聞えていたとのこと。無線の威力を肌で感じた瞬間だった。
 穂高岳山荘でめいめいリラックスしていると名古屋発のN沢さんももうすぐ来るとのことで皆で待つことにした。すると黄色のタオルを頭にまいた登山者出現。総勢9名がそろった。そしてザイテンを降りてテン場に戻った。体は疲れていたが、良すぎるほどの天候、バリエーションルートを登りきった達成感、思いやりある仲間に囲まれ、本当に充実した一日だった。

B:奥穂ピークハント
【行程】涸沢7:45出発→10:10穂高岳山荘着→穂高岳山荘10:45発→12:30奥穂山頂着→奥穂山頂13:00発→13:50穂高岳山荘着☆後合流
【記録】
 本日は快晴。涸沢までで十分と言うT田さんを無理矢理奥穂に誘う。昨日の歩きっぷりを見ても体力的には問題なし。へばっていた私が引っ張って行くのはおこがましいが、こんな良い天気の日にピークを踏まないのは勿体なさ過ぎる。K藤さんが一緒なので、心強い。
折角、アイゼンを持ってきているので、付けて歩いてみようと、雪渓の中央部を行くルートを登る事にする。雪渓前半はアイゼンで歩き、途中、地道になった所で外して、後半はキックで歩いた。雪渓が終わり、ザイテングラートの登りになると、お花畑が広がって黄色の花が群生していた。 今日は、ほとんど空身なので元気だ。やっぱり山はいいなぁと改めて思う。穂高岳山荘の下まで来ると、又、相当の雪渓が残っていた。小屋の前の石垣から下を覗くと雪渓の深さは5〜6mはあろうかと思われた。
涸沢も北尾根もくっきりと見える。朝からずっと、K藤さんが無線をオープンにして登攀組に呼び掛けるが応答なし。
奥穂への登りに掛かる。久しぶりの岩の感触が心地良い。
奥穂高岳からは360゜の展望。目の前にゴツゴツとした岩肌を見せているジャンダルム、いつか越える事があるだろうか。
携帯のアンテナが立ったのでN沢さんに掛ける。紀美子平手前一時間位との事。登攀組との無線交信はならず。 
ひとしきり展望を楽しんで穂高岳山荘に下山。小屋で昼食を食べ、早く降りて、涸沢で生ビールにしようと降りかけると、無線機がOさんからのコールをキャッチ、奥穂ピークにいると傍受。ならば待とうと、下山を取り止めた。
暫らく待つと登攀組が到着。N沢さんも岳沢から登って来ているとリーダーに伝えると、ここで待って全員合流し一緒に下山する事に決まる。さらに待つ事小一時間、皆が見上げる中、トレードマークのタオル鉢巻きにランニングシューズでN沢さんが下って来た。 全員で記念写真を取って涸沢へ下山。
ザイテンの降りも安定した足運びが出来た。先週の笊では、バランス感覚の低下でそれほど大した事の無い所でも腰が引け、T田さんとSさんに手を取って貰う体たらく。情けない思いをしたが、この二日間の山行で、バランスと脚捌きの感覚が戻ってきた。足も時々痛むものの、痛み続ける事もなく歩けた。 これでハードな山行は無理でも、山を楽しむ程度には歩けると、少し自信を取り戻す事が出来、有意義な山行であった。

C:夏合宿穂高周辺後発単独縦走
【行程】8/5(土)2:00東名豊田〜6:10平湯アカンダナP〜7:15上高地BT〜7:30岳沢登山口〜10:00岳沢ヒュッテ〜13:00紀美子平〜14:40奥穂高岳〜15:10白出のコルにてメンバー全員と合流
【記録&感想】
まず豊田から平湯には車で3時間と読んだが、信州方面には京都からすら運転したことが無く勿論岳沢ルートも初見参.不安どころか登山口に到達できるかどうかも怪しい船出である.案の定高速を降りてR158に入ったつもりがいつの間にか違う道に.軌道修正したもののタイムロスは一時間超!それはともかく一日遅れで上高地入りしてどこで本隊と合流するかが今回の最大のポイントである.当初後発組は4名パーティであったがK川嬢の乱?など于余曲折の末に単独行となる.難しく考えないで横尾経由で涸沢入りし残った時間でザイテンから本隊を追い込むのが無難な選択ではあるが上高地に降り立った途端にそのルートは頭から綺麗に消え去っていた.本隊との交信が不可の為S内会長に岳沢ルートで登る旨メールする.岳沢はどこも電波状態が良好で度々会長とやりとりをする.登り始めて30分くらいで広いガレ沢に出るが二人がそこから降りて来たのと数名が休んでいたので何の疑いも持たずそのガレを登る.マークが無いのでオカシイと思ったが右の樹林から声が聞えるので先で合流してる筈と高をくくりそのまま登る.しかし遮るものがないガレは暑さが堪える.樹林帯にトラバースを試みるが崖に阻まれて断念.ようやく馬鹿らしくなってきたのと暑さでバテ気味の為間違えた地点まで戻る決意をする.またしても一時間のタイムロス、時間は9時になっていた.そのまま上高地まで戻り涸沢を目指せば15時には着けるだろう、それで合流してビール呑んで終了!もチラと考えたが足は勝手に上へと向かう.岳沢にはコースタイム通りに到着、小屋は今冬の大雪で壊れて使えないと聞いていたがそんな風でもなかった.ただ宿泊は不可で売店は営業、幕営も可.さて愈ここから重太郎新道、出だし二度のつまずきで観念してコースタイム通りに歩くことにする.いやコースタイムでしか歩けなかった!事前の歩荷トレには参加せず笊ヶ岳捜索以来、丸一年振りのブッツケ本番.直近のハードなトレーニングといえば5ヶ月前の篠山マラソンに遡る、それで初めてのルートを辿り足元はといえば運動靴.山を舐めてるというより人生を舐めてると言った方が適切か.しかし重太郎新道はきつかった!途中追い越した数人のグループに運動靴を見咎められ『ザックには入れてるけどここではまだ出さなくていいでしょう』『いいやアンタは最後までそれで行くはずや』なして??ハイ、結局その方の言われた通り登山靴は一度も日の目を見る事なく無事涸沢に.紀美子平の手前で奥穂ピークのK藤さんから電話があるが、こちらはまだまだなのでさっさと降りて呑んでおいてと伝える.午後1時前にようやく紀美子平に到着、看板には前穂まで0.4キロとあるが来年の宿題と横目に通りすぎ吊り尾根へ.この辺りでは既に気力だけで歩いていた様で、涸沢で待つメンバーと無念の直前リタイアのK川さんの分も歩くんだとの思いだけで足を運んでいた.奥穂ピークから降り始めて暫くすると又K藤さんから電話で穂高岳山荘で全員揃って待っていると知らされる.どして??それから数分小屋の周りに見知った顔を発見、手を挙げて応える.こうして無謀な単独縦走は終ったが、気力だけで歩き通したとはいえダメージは深刻で一週間も階段の昇降に不便をきたした.


◆8月6日(日)晴れ
【行程】涸沢7:00出発→8:10本谷橋着→9:15横尾着→10:10徳沢着→11:10明神着→12:00上高地着→上高地からバスにて12:30発→13:00平湯駐車場着→平湯温泉から車にて14:00発→19:30山科駅到着、解散
【記録】
8月6日、涸沢は涼しく下山するのが惜しまれる好天でした。雲量4〜5、絹雲が空を覆い、積雲がぽつぽつと見られ、今日一日の好天が約束される上々の空模様でした。横尾までは列を組んで降りました。日差しは強く、直射日光は肌に紫外線の痕を残し、体の火照りを感じました。
横尾からは各自のペースで歩きましたが、日陰が多く楽に歩けました。N野、U坂の両名は待ってましたとばかりに早足で遠ざかっていきました。私は徳沢までの区間で先頭よりも15分も遅れを取ってしまいました。私が着いたときには、皆さんソフトクリームを食べ終わっていました。しかし、私もソフトクリームを食べると体に力が回復し、先頭を突っ走るN野、U坂さんのペースについていくことができました。
昔から、山男山女は嘘つきが多いといいますが、まったくそのとおりでした。M山さんは「ゆっくり行こう」と言いながら先頭を突っ走る両名についていくし、K藤さんは「みんな早すぎて付いていけない」と言っていましたが、置いていかれたことなど一度もなさそうでした。私も昔を思い出して、最後は突っ走る先頭グループに加わりました。


【感想】49期 K.T.
久しぶりに重い荷物を担いで参加し、初日は完全にくたばっていましたが、二日目は何とか持ち直し前穂北尾根を登ることができました。三日目も皆さんの速いペースについていくのがやっとでした。

【CL所感】43期 H.M.
 長引いた梅雨をとりもどすかのような安定した快晴が三日間続きました。もちろん日焼けのダメージや給水面から言えば、少し曇っている方が有りがたいに違いありませんが、アプローチ・下降の距離も長く、エスケープもしにくい前穂北尾根の場合は、ともかく落雷や夕立の不安が全く無かった点で最高のコンディションと言えるでしょう。
 今回の合宿は、ロープを使う登攀としては入門ルートですが「会として」一応バリエーションルートのクライミングを「合宿」に組めた点で大きな意義があったと思います。(「合宿」は「例会」と違って、単純に山行のレベルや参加数だけでなく、山岳会の性格や方向性を決めるような側面も持っていると思いますので。)
個人的にも、もう一度登っておきたかったルートなので、気持ちよく終えることが出来ました。来年の合宿につなげて行きたいものです。
 今回の合宿のCLとしての目標は
  1. 参加会員個々のレベルに応じた課題を通して、それぞれの技量・経験の向上を図るとともにメンバー個々の技量・性格・経験を相互に理解し、今後、より安全でレベルにあった山行を実施できる共通認識を形成する。 
  2. 合宿という形態を通して、参加者個々が組織登山の目的や意義を理解し、メンバーとしての責務を自覚的・自律的に果たすことができる土台を養成する。 などがあります。
@の評価
  1. 初心者の新人をベテラン・中堅会員2名がサポートして、奥穂山頂を踏めた。
  2. 骨折事故後の中堅会員が新人をサポートしつつ、ピークハントをリハビリに活用し、体調管理に自信を得た。
  3. ルートファインディングとマルチピッチのロープ操作が比較的スムーズに行えた。また、CLが前回メンバーとして登ったルートを、ともかくCLとしてトレースできた。 
  4. 入会以来クライミングに熱心にとりくんできた若手会員が初めて高所でのルートクライミングを経験できた。
  5. ベテラン新人の戸田さんと会員の間で、共通理解が増えた。
などなど

Aの評価
  1. 計画書の作成について、遅くはなったがメンバーとの往復と調整を加えつつ比較的丁寧に作製できた。
  2. 「主食持ち寄り」の合理性と両立する形で、食料担当が合宿らしい食事作りをしてくれた。
  3. 読図と天気図は山域の特性上課題としなかったが、意識としては常に必要であることを確認しておきたい。
  4. コースタイムはほぼ正確に設定し、実行された。(コースタイムの設定は参加者の技量とコースの状況の両方に対する判断が必要である。下山遅れや事故を防ぐ意味でも、コースタイムをどう設定し、記録とどのように一致したかは常に評価検討すべき点である。)
  5. CLの指示に対してメンバーが協調性を持って行動していた。歩行時のオーダーや休憩の指示、登攀時の指示に対して、メンバーが適宜意見を述べつつ、忠実に従い統一感のあるパーティーだった。
  6. 万一のトラブルに対して備えるというバックアップの意識をもって行動できている場面がいくつかあった。
特に奥穂での3班の合流という難しい課題を、幸運の力も借りたものの、意識的に達成できた。

反省点と課題
  1. 事前のマルチピッチトレーニングが雨で流れ十分でなかった。
  2. 装備・ルートなど計画書の策定に関わって、ミーティングが開けず。メール上のやり取りだけで終わった。
  3. 携帯以外にメールの無い会員に対して情報格差が生じた
  4. 食当への負担が大きかった。
  5. 共同装備の重量コントロールは不十分だった。
  6. 無線をリーダーが持っていないのは本来不適当だろう。
CLの総括としては以上のとおりです。
補足点はメンバーの感想の中から読みとれることと思います。至らないCLでしたが、参加者の皆さん、バックアップありがとうございました。


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