京都比良山岳会
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活動記録 > 2007年
[No.2812] 中央アルプス越百山(こすもやま)


【日程】2007年3月30日(金夜)〜4月1日(日)
【山域】越百山(伊奈川ダム登山口から山頂往復)
【参加者】計3名
【行程】
30日(晴れ) 20時山科発, 24時伊奈川ダム駐車場着 仮眠
31日(曇りのち雷雨) 5時起床, 6時10分出発, 6:07駐車場〜6:55登山口〜7:26水場〜7:31下のコル〜8:22上のコル〜12:13越百小屋〜13:00小屋出発〜14:00 2560m地点〜14:33越百小屋
1日(晴れ) 7:00越百小屋〜11:24下のコル〜11:56登山口〜12:28駐車場, 13時20分「恋路の湯」, 17時 山科解散

【感想】
5年ほど前の初冬に訪れた越百山を、晩春に再訪することになった。越百山は中央アルプス南部に位置し、2,613mと標高もあり中央アルプスや南アルプスの展望に恵まれた良い山である。頂上付近はアルペン的な山容だが、登山道はおおむね穏やかで難所はない。無雪期には空木岳や南駒が岳を縦走した登山者が最後に通過する山のイメージが強く(表銀座の蝶が岳と似ている)脚光をあびることはないが、登山口からの標高差も1,800メートル程度あり、雪稜や雪壁も少しあって、積雪期のトレーニングにはちょうどよい。
 今回は天候が不安定で、山中で低気圧が通過することが分かっていたので、状況を見ながら進んだ。31日朝は寒気が入り、登山口でも氷点下に冷え込んでいた。
天候は高曇りで、低気圧の接近を告げている。低気圧の勢力がそれほど強くないことと越百小屋の横に冬季避難小屋があることから、少なくとも幕営地までは安全と考えて出発する。このとき、早朝の寒気にだまされ、「登山口でこの気温なら2400メートルでは雨はない」と判断してフライを車において出発。それが悲惨な事態を引き起こすことをこの時点では知る由もない。登山口から7合目までは順調に高度を上げるが7合目からは樹林帯のモナカ雪が悪い。一歩ごとに踏み抜いて、なかなか進めない。悪雪のラッセルで時間と体力を消耗。ようやくテント場に着くが、3人とも体力的にはすでにバテ気味である。ここでまず想定外の事態が発生。前回は開いていた冬季避難小屋の入り口がすべてがっちりと南京錠で施錠されている。「本当に困ったら壊して入ってください」という意味なのだろうか。これでは避難小屋の意味がない。もともと予定はテント泊だが、よほどの悪天なら避難小屋に逃げ込もうという計算が狂ってしまった。今夜の低気圧が心配されるが、小屋の下の一段低くなった平坦地が風・落雷の両面から比較的安全と判断し、テントを張る。張り綱はブッシュに固定し、後で防風壁も追加した。
行動食をとってからピークハントに出発。御岳・乗鞍はすでに雲に飲み込まれた。様子をみながら行けるところまで頂上へ向かうことにする。やはりモナカ雪を踏み抜きながらのラッセルで前山を越え、頂上直下の痩せ尾根に着いたところで、いよいよ雨雲が近づき頂上はガスの中に消えた。時間と疲労度、これから強まる風雪を考えて、今回はピークハントをあきらめて、頂上まで標高差50mの尾根上から引き返す。テント場にもどりビールで乾杯。K藤さんが今回も用意してくれた豚キムチ鍋のご馳走をたらふく食べて幸せに就寝した。
 一眠りした頃、雷鳴と閃光で目を覚ました。外はシャワーをかけるような雨。高層天気図などで寒気の状態や気温をチェックしておけば雨も予想できたかもしれないが、後の祭りであった。まずは雷が気まぐれに寄ってこないことを願いつつ、テント内を確認。やはりフライなしでは雨漏りは避けられない。壁面を伝って雨水が床を流れ始めた。傾斜のある足元に水がたまり始めたので、とりあえず、シュラフ・靴・靴下・手袋・貴重品を濡らさないよう、頭の近くの高い場所か、シュラフカバーの中に避難させるように声をかける。閃光と雷鳴の感覚は最短で6秒。小屋と立ち木が側にあり、かつ側撃を受けない位置に張ってあるので、避難小屋の扉を壊して逃げ込むという手段はとらずにおいた。コル方面の風音はすごいが、テントはほとんど影響を受けなかった。
 雨の方は順調に浸水し、足元は深さ5センチのプール状態。敷いたザックや食料はずぶぬれだが排水しても雨がやまないうちは仕方がないので、体が水に浸からないように高台に避難しつつ、かまわず寝る。案外熟睡できた。
 夜明けには予想通り前線は通過し雨が上がった。寒気が流入して凍り始めると厄介なので、薄明るくなる頃から排水作業を開始。コッヘルリレーで水を汲みだした。バケツ5杯くらいはたまっていたようだ。とにかく今濡れていないものを濡らさないよう注意して、荷物を整理し、乾くものは乾かし、濡らさないように靴を履き、朝食をとる。昨日の残りの豚鍋に中華麺をいれた朝食と紅茶がおいしかった。
 快晴の朝に輝く頂上が見えているが、雨で腐った雪の下山に時間を食いそうなので頂上はまたの機会にして下山にかかる。3歩ごとに太ももまで踏み抜く昨日よりもさらに悪い雪に苦しめられて下山にも登りほど時間がかかる。それでも5合目からはスムーズに降りて、昼には登山口についた。下界はすっかり春の陽気でふきのとうがたくさん道端に咲いている。帰ってから知ったが、この日静岡では31.5度を記録したらしい。車に戻って、あとは風呂を求めて帰途につく。19号線沿線の「フォレスパ木曾『恋路の湯』」という何やら艶っぽい名称の温泉に入った。露天風呂から眺める中央アルプスの山並みが最高である。比良トピアのような施設だが休日の昼なのにやけに空いていた。夕張市を連想してしまう。次行ったときも有るといいのだが・・・。結果的には「これもまた楽し」という山行であったが、一歩間違えば大変なことにもなりかねない。やはり山をなめてはいけないというのは今回の教訓である。メンバーのみなさんには申し訳なかったが、案外楽しんでおられたようなのはさすがである。最後になったが食事を作っていただいたK藤さん、ラッセルに奮闘していただいたN野さんに感謝。


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